生命を理解する道具としての計算機 -遺伝子からネットワークへ-

生物学は、前世紀に誕生したハイスループットな手法、すなわちDNAシーケンサやマイクロアレイと言った大量のデータをもたらす実験手法によって、データドリブンな科学へと変貌を遂げた。そして今日では、次世代シーケンサ等により、生物学的データの総量は爆発的勢いで増加している。これは生物学者に新たな視点をもたらしたが、同時に手作業では決して解析不可能な量のデータとどう向き合って行くかという問題を生み出した。幸運な事に、この生命科学での変化と時を同じくして、計算機科学も進歩を遂げ、さらにインターネットの商用利用の普及により、ネットワークやディスクなどの計算機リソースは格段に安く利用出来るようになった。これらの二つの流れが融合して生まれた分野がバイオインフォマティクスである。この分野では、データの統合/解析/可視化等を行い、生物学者が大量のデータから生物学的知見を得ると言うのが基本的な流れであり、このワークフローを実現する上で、様々なツールが利用されている。

 

今回の講演では、生物学研究の現場で用いられているバイオインフォマティクス的手法の簡単な歴史と、そこで使われているツール等について紹介する。特に、我々が開発を行っているネットワーク生物学で使われるCytoscape等のソフトウェアのデモ、そしてEBIなど、世界各地の生物学的データベース提供者や日本のDBCLS(http://dbcls.rois.ac.jp/)が協力して行っているデータ統合の流れについて紹介する。 

 

大野 圭一朗

Research Associate / Programmer Analyst

Department of Medicine

Trey Ideker Laboratory

UC San Diego

 

UC, Irvineにて計算機科学の学位取得後、南カリフォルニア大学医学部で研究アシスタントとしてライフサイエンス系データの解析を行うプログラミング業務を行いつつ、理学部にてComputational Molecular Biologyの修士を取得。その後UC, San Diegoにて現職。ライフサイエンス、特にシステム生物学と呼ばれる分野で使われるソフトウェアの設計や開発を行っている。主なプロジェクトはCytoscape (http://www.cytoscape.org)