第75回SCJSF&JABAフォーラム
「細胞」
日時:2025年10月11日(土)午後3時~6時
会場:UCLA CHS(Center for Health Sciences) Rm17-256
講演1
「細胞にプログラムを書く:CRISPRでつくるマウス胚モデル」
上月彩夏
Ph.D. Program in Bioengineering, Division of Biology and Biological Engineering,
California Institute of Technology
要旨:私たち一人ひとりの体は、たった一つの受精卵から始まり、数え切れないほどの細胞に分かれ、臓器や組織を形づくっていきます。この不思議なプロセスを理解することは、生物学の大きな謎であり、将来の医療にも直結します。最近の研究では、マウスの幹細胞に「CRISPR」という遺伝子編集の仕組みを使って“プログラム”を与えると、細胞が自ら集まり、胚のような立体構造をつくり出すことが分かってきました。本講演では、この新しいマウス胚モデルを使った発生研究の最前線と、その成果がどのように今後の疾患理解や再生医療につながっていくかをご紹介します。
ご略歴:2023年、カリフォルニア大学サンタクルーズ校分子・細胞・発生生物学科を早期卒業(バイオインフォマティクス副専攻)。同大学で研究補佐員を経て、同年よりカリフォルニア工科大学生物工学科博士課程に進学。専門は、トランスジェニックマウスやES細胞を用いた発生生物学と合成生物学の融合研究、特に細胞系譜解析技術を活用した網膜発生の理解。
講演2
「腎臓がんはなぜ転移するのか:細胞間コミュニケーションが生む新たな治療法の可能性」
石原萌惠
要旨:日本人の死因の首位を長年占めているのは、悪性腫瘍、いわゆる「がん」です。実際、多くのがん患者さんは最初のしこりそのものではなく、体の別の場所へ広がる「転移」によって命を落とします。では、なぜがんは転移してしまうのでしょうか?がん細胞は一見するとすべて同じ性質を持ち、勝手気ままに増えているように見えます。しかし実際には、がん細胞どうしがお互いに協力し合い、周囲の環境とも巧みにやり取りしながら生き延びているのです。その結果として、転移という非常に複雑で厄介な現象が起こります。私たちの研究では、この「がん細胞の協力関係」が転移に欠かせないことを示す新しいモデルをつくり、さらに転移の“司令塔”となる細胞だけを狙い撃ちできる薬を探しています。驚いたことに、その候補はすでに多くの人が使っている身近な薬の中にありました。本講演では、がんの転移という大きな謎をめぐり、細胞どうしの協力という新しい視点と、それを治療につなげる最前線の試みについてご紹介したいと思います。
ご略歴:2017年、University of California, Los Angeles (UCLA) 分子・細胞・発生生物学科を卒業(バイオインフォマティクス副専攻、Magna Cum Laude)。2023年、UCLA Ph.D in Molecular and Medical Pharmacology。2023-2025 年、同Postdocotral Scholar。日本学生支援機構(Jasso)海外大学院学位取得型奨学生(2019−2022)、UC Tobacco-Related Disease Research Program (TRDRP) Predoctoral Award (2020-2023)、UCLA Dissertation Year Fellowship (DYF) & Dr. Ursula Mandel Scholarship (2022-2023)。専門は、分子生物学、細胞生物学、癌研究、特に腎臓癌の転移のメカニズムの解明と低分子スクリーニングを用いた早期創薬研究に従事。