第29回フォーラム 2013年5月18日 「脳腫瘍と量子光学−2012年ノーベル物理学賞解説」

「癌免疫治療の最前線 ~低侵襲性脳腫瘍治療を目指して~」

天野貴之(Takayuki Amano), MD PhD
Cedars-­‐Sinai Medical Center, Department of Neurosurgery

手術方法の発達、新しい抗がん剤や放射線治療の開発など、癌治療分野における近年の医療技術の発達は目を見張るものがあります。そんな中、唯一脳腫瘍分野では癌患者の
治療成績を測る目安となる5年生存率にこの十数年大きな変化がない状況です。なぜ脳腫瘍だけ、治療成績が 向上しないのか?脳腫瘍治療研究における問題点を総括するとともに、新しい試みである脳腫瘍に対する免疫 療法を最新の実験データを上げながら、紹介させていただこうと考えております。

略歴:2002年山口大学医学部卒業 同年山口大学医学部脳神経外科入局、脳神経外科として研修を行い、2007年山口大学大学院システム統御医学系専攻脳神経外科学卒業 2009年日本脳神経外科専門医免許取得 臨床活動は財団法人健和会大手町病院医局員、医療法人社団成蹊会岡田病院脳神経外科部長を歴任、2010年5月より米国Cedars-­‐Sinai Medical CenterのDepartment of Neurosurgeryに所属し、脳腫瘍特に神経膠芽腫の研究を行っている。


「量子光学から量子コンピューターにむけて−2012年ノーベル物理学賞解説」

碁盤晃久(Akihisa Goban)
カリフォルニア工科大学 物理学科

1935年にEinsteinらが指摘したように、光や原子は、時に奇妙な量子的な性質を表します。しかし、量子的な性質は、測定しようとすると測定者が引き起こすノイズにより壊れてしまいがちな、非常に繊細なものです。HarocheとWinelandが開発した手法は、量子特性を破壊すること無く調べ、操作することを可能にしました。これらの手法は、科学技術の新たなブレイクスルーとして期待されている量子コンピューターの実現への大きな一歩です。本講演では、光や原子の織りなす不思議な量子的性質に簡単に触れ、どのように実現されたのか解説します。

略歴:2009年に東京大学物理学科修士課程終了。現在、カリフォルニア工科大学物理学科博士課程在学中。Kimbleグループにて、量子光学および量子情報処理の研究に従事。