日米同盟と日本の安全保障


1. 日本の安全保障環境についての情勢認識
日本の安全保障をめぐる環境は米国の対日要請の変化、中国の大国化、北朝鮮のミサイル・核兵器開発と進展等従来の対応の変革を迫る状況が生じており、抜本 的な情勢分析と政策の検討が要請されている。まず、米国に関しては、米国は日米同盟を(1)対象地域を極東から世界全体(2)理念を主権尊重、武力使用の 抑制を基本とする国連憲章から、国際安全保障環境の改善のために積極的に軍事行動をする(3)自衛隊に関してはその積極的関与を求める方向に転換し、オバ マ政権もこの姿勢を強めている。また中国に関しては、地域格差からくる政治不安、環境問題、水資源の不足等様々な問題を抱えているが経済発展が進んでいく ことは間違いなく、一試算に基づけば購買力平価ベースで二〇二〇年には日本の四倍、三〇年には五倍、かつ米国を上回ると予測される事態となっている。具体 的数値が如何なるものになるかは不確定であるが、百数十年ぶりに日本は、日本より強力な中国と隣り合わせる事態に直面していく。 北朝鮮に関しては、ミサ イル・核兵器開発が一段と進み、北朝鮮の対日発言には極めて先鋭的なものがあり、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保 持」することだけでは限界があることを示している。

2. 鳩山政権の誕生
この中、選挙中「CHANGE」をスローガンとした鳩山政権が誕生した。その政策はいまだ明確ではないが、(1)インド洋への自衛隊給油活動の停 止、(2)普天間基地移転の見直し、(3)アジア共同体の提言を行った。こうした動きに対して米国政府はゲーツ国防長官、キャンベル等が自民党時代の約束 を守らなければ日米関係は壊れると強い態度で臨んだ。他方ナイ、アイケンベリーなどが現政権内の強硬路線は日米関係のより重要な物を壊すとの批判を行って いる。

3. 日本のとるべき道
日本の安全保障を見るに、中国、ロシア、北朝鮮の軍事的脅威に、軍事的手段で対抗することはほぼ不可能である。米国の「核の傘」にもその有効性に限界があ る。この中、経済的結びつきをつよめ、中国が日本を軍事的に攻撃すれば、巨大な経済的被害を得、これが中国指導層の政治基盤を弱めるシステムを作ることが 最も有効な抑止力となる。

孫崎 享(まごさき うける)氏
1943年旧満州国鞍山生まれ。1966年東京大学法学部中退、外務省入省。英国(二回)、ソ連(二回)、米国(ハーバード大学国際問題研究所研究員)、 イラク、カナダ勤務を経て、駐ウズベキスタン大使、国際情報局長、駐イラン大使を歴任。国際情報局長時代は各国情報機関と積極的に交流。2002年より防 衛大学校教授。この間公共政策学科長、人文社会学群長を歴任。2009年3月退官。著書に『外交官』(あいうえお館)、『カナダの教訓』(ダイヤモンド 社)、『日本外交―現場からの証言―』(中央公論新社)。『日米同盟の正体』(講談社、2009年3月) 、『外交と情報』(PHP2009年10月)。 うち、『日本外交―現場からの証言―』は山本七平賞を受賞。また『日米同盟の正体』は週刊東洋経済09年上半期政治書ベスト2。7刷計27000部。 NHKラジオあさいちばん「著者に聞きたい本のツボ」に出演。放送の模様は同ウエブサイトで視聴可。Amazon の日米安全保障関係では7ヶ
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